森沢 秋 さん
約7年、いや、それ以上前ですか?
森沢 秋 さんがコミケで出した、ミニコミ誌向けの記事だったとの事です。
それをWEB上で過去公開されていたものを預からせて頂きました。
森沢 秋 さんの許可を得て、改変・転載しています(HTMLへの整形、誤字文字化け等の修正)、御容赦を。
(一歩:2002.10.8)

Part 1.
1 妖女サイベルの呼び声
2 夢の10セント銀貨
3 ムルガーのはるかな旅 *
4 クモの宮殿
5 ペガーナの神々
6 あべこべの日
7 五つの壷
8 ラベンダー・ドラゴン
9 星を帯びし者
10 ドラゴンになった青年
11 最後のユニコーン
12 竜の冬
13 タピオラの冒険 *
14 魔法半分
15 ユーラリア国騒動記
16 ガラスびんの中のお話
17 黄金の鎖 *
18 ピポ王子
19 自転車で月へ行った男 *
20 妖精の王国
21 海と炎の娘
22 二人の魔法使い
23 光の女王ロリーニ
24 終わりなき道標
25 聖域の死闘
26 ゲイルズバーグの春を愛す
27 精霊達の庭 *
28 ビバ!ドラゴン
29 異星から来た妖精
30 魔法使いの弟子
31 カメレオンの呪文
32 光のかけら *
33 神々の角笛
34 風の竪琴引き
35 北風のうしろの国
36 魔法がいっぱい
37 妖精郷の騎士
38 田園幻想譚 *
39 イシュタルの船
40 魔法の湖
41 金色の階段の彼方
 定期購読のお知らせ
42 月と太陽の魔道師
43 冬物語
44 魔王の聖域
45 闇の公子
46 魔性の犬 *
47 魔法の国の旅人 *
48 白馬の王子
49 鋼鉄城の勇士
50 死霊の都
51 幻魔の虜囚
52 英雄たちの帰還
53 闇の城
54 水晶の涙
55 妖魔の騎士(上)
56 妖魔の騎士(下)
57 ありえざる伝説 *
58 霧の都
59 ルーグナ城の秘密
60 魔術師の帝国(上)
61 魔術師の帝国(下)
62 氷の覇者
63 水の誘い
64 風の勇士
65 夕映えの戦士 *
66 真夜中の戦士 *
67 暁の戦士 *
68 白い鹿
70 銀の陽
71 闇の月
75 黒い獣
76 金の鳥
73 夢織り女
74 3つの魔法
77 魔界の盗賊
78 魔法の通廊
79 妖霊ハーリド *
80 青い剣
82 月下の戦士 *
83 影に歌えば
86 死の王
89 惑乱の公子
90 人食い鬼の探索
96 タマスターラー
98 シルバーソーン(上)
99 シルバーソーン(下)
100 英雄と王冠
105 夢馬の使命
107 セサノンの暗黒(上)
108 セサノンの暗黒(下)
125 王女とドラゴン
121 熱夢の女王(上)
122 熱夢の女王(下)

Part 2.
84 妖精王の冠
85 プリンセス・ブライド
91 王様猫と野良猫の冒険
92 ダミアーノ
93 ウインターズ・テイル(上)
94 ウインターズ・テイル(下)
95 サーラ
97 ラファエル
101 ムーンフラッシュ
102 ダークエンジェル
103 霜の中の顔
104 無限コンチェルト
106 予言の守護者
109 蛇神の女王
110 異教の女王
111 ウィロー
112 竜神の高僧
113 黒竜とお茶を
114 宗主の妃
115 ムーンドリーム
116 魔術師の要塞
117 牡鹿王
118 蛇の魔術師
119 円卓の騎士
120 勝負の終わり
123 ホムンクルス
124 魔法の王国売ります!
128 悪魔の機械
129 夏の樹(上)
130 夏の樹(下)
131 リバイアサン
132 天界の馬
133 黒いユニコーン
134 テイルチェイサーの歌
135 異時間の色彩
136 西方の守護者
137 ルーフワールド
138 魔術師の大失敗
139 熊神教徒の逆襲
141 闇との戦い
142 マーゴスの王
143 禁じられた呪文
144 迷宮都市
145 一角獣をさがせ!
146 光の軍隊
147 疫病帝国
148 カランダの魔神
149 太陽神の乙女
150 メルセネの錬金術師
151 ダーシヴァの魔女
152 アフロディーテの贈り物
153 ポセイドーンの審判
155 光と闇の姉妹
156 ケルの女予言者
157 白い女神
 総評


Hayakawa FT Part 1.


ハヤカワ文庫FT 大特集 Part 1.

森沢 秋


 近頃こそファンタジィを読むのに困りはしないが、ほんの2、3年前はこれほど、幻想物は氾濫してはおらず、我々はSF愛好者の影に隠れてひっそりと暮らさねばならなかった。嗚呼、そんな我らに救いの綱を差しのべたのは誰か。そう、ハヤカワ文庫FTである。理屈抜きの快楽を求めてさすらう者たちに一筋の(ほんの一筋ではあるが)光を照らしたのだ。我々が現代の幻想を求めるにただ一つの窓であった。

 そんな昔を振り返り、私は大特集、題して

「ハヤカワ文庫FTを追え!FT1から現在まで」

 を企画したのであった。思えば、2年前のことである。だがしかし、世間の風はそう暖かくはなく、この大イベントは今、ここにスケールを遥かに小さくしてひっそりと行われる。題して

「ハヤカワ文庫FTを追え!Part FT1からFT80まで」

 今、私はこの、悲願達成への第一歩を踏みだした。辛かった。苦しかった。構想2年、制作2日。もちろん、今日と明日のことである。

 残念ながら、版元絶版手に入らなかった物も多く、それらについてはその旨を記し、内容紹介を目録(1986年)より、転載した。(名前の後ろに*印)なお、各書の解説は番号順(出版順)に並べた。ただし、シリーズのみはまとめて紹介してある。また、タニス・リーのみ、点数が多く個別に収録すると見づらいため、シリーズ、非シリーズを無視して一括した。

 最後の星印は私個人のお勧め度である。気休め程度に参考にして頂きたい。


1  妖女サイベルの呼び声

  パトリシア・A・マキリップ

 栄えあるFT文庫大一弾はこの人である。主人公、魔女サイベルは、独り果ての山に住み、その力で呼びだした魔獣、幻獣を供としている。だが、彼女は下界より、王子を託され、育てていくうちに今まで知ることのなかった憎しみ、悲しみ、喜び、そして愛をその身に刻みつけていくことになる。
 非常に幻想的で美しく、摩訶不思議な世界を描いている。そして、話の軸をサイベルの愛、憎しみ、自由としているために感情的にも引き込むものを持っている。

☆☆☆☆☆


2  夢の10セント銀貨

  ジャック・フィニイ

 今度はうって変わって現実的。舞台はアメリカ、主人公は会社員の女房持ち。きわめて平凡な男である。そんな彼がなんと、もう一つの世界へ行ける魔法のコインを手にいれたのだ。もう一つの世界に行けば、彼は有能で、妻は美人で新鮮。
 なんだか、本の裏の宣伝みたいだが、話はこう始まる。そして、主人公はあちらの世界、こちらの世界、といったり来たりする。文体は軽うく、読みやすい。主人公が結構いい加減で間抜け。そこら辺は楽しめる。

☆☆☆


3  ムルガーのはるかな旅

  ウォルター・デラメア  *

 王族の血を引く3匹のサル王子たちは、行方不明の父を捜しに、旅に出た。だが、かれらの行く手に現れるのは肉食ザル、闇の魔女水の精などの不思議な生き物たち、あまたの苦難を持ち前の勇気と知恵で切り抜けて成長していくサル王子たちの冒険を英国の詩人が豊かな完成と美しい言語で流麗に綴る古典的名作!(とのこと)



4  クモの宮殿

  リチャード・ヒューズ

 まさに童話集であるが、その内容が非常に奇抜。真っ黒で暗闇を放つ子供の話、電話をかけて、通じた先へ言ってしまった女の子の話。まともに読んでいたら頭がわやになりそうで、これは近くの子供にでも読ませたらいいのでは。でも、結構楽しめる。

☆☆



5  ペガーナの神々

  ロード・ダンセイニ

 これはこの人の創作神話で、異世界の神々の盛衰を描いている。
 この人は非常に有名な人で、強い影響力を持っている。「聖剣サクノスを除いては破ること叶わぬ堅砦」はなかでもとっても有名でどっかで聞いた人も多いはず。だが、あまり登場人物の感情が感じられなくて、私はこの人は好きではない。

☆☆



6  あべこべの日

  ハンス・ファラダ

 これも「くもの宮殿」と同じような、いわば童話集となっている。しかし、こっちのほうが、多少凝っていて楽しめそう。趣味の問題もあるのかも知れないが。
 表題作あべこべの日には、なんでもかんでもあべこべになる。お父さんは馬車につながれ、後ろには馬が乗って鞭を鳴らす。すべて無茶苦茶になっていて、大変。

☆☆☆


7  五つの壷

  M・R・ジェイムズ他

 これも童話集、どうやら初期の頃は出版する方も迷っていたようだ。傑作集となっていて、他にマクドナルドのものも載っている。どうやら、古典的名作路線をこの頃は狙っていたようだ。それなりに面白いのだけれど。発行は昭和五四年

☆☆


8  ラベンダー・ドラゴン

  イーデン・フィルポッツ

 これはちょっと変。まあ、始まりはもちろん、竜退治で、騎士がo場。口の達者な従者も付いてセオリー通りなのに、出てくる竜はラベンダーの芳香がするのだ。そして、輝く宝石のようなこのドラゴンは…。
うーむ。途中から、社会小説のようになるし、このドラゴン、えらく教養があるし。ラストも良くて、お洒落な小説である。読んでいると、ラベンダーの香りがしそう。

☆☆☆☆


9  <イルスの竪琴>

  パトリシア・A・マキリップ

9  星を帯びし者

21  海と炎の娘

34  風の竪琴引き

 ここらに至ってようやくシリーズものが出でくる。これは田舎の領主モルゴンの一代記で、巻を進むごとにその内容は白熱していく。まずは、謎ときから。そして竪琴弾き。魔法使い。魔物。この人の文は不思議と、かの幻想の世界の趣を伝えてくれる。見えない絆で結ばれた登場人物たちをおそう運命の渦はドラマチックで、意外な展開が次から次へと広がり、飽きさせない。

☆☆☆☆☆


10  ドラゴンになった青年

  ゴードン・R・ディクスン

 そろそろ典型的なFT文庫といったところ。主人公とその彼女が中世のイギリスへとトリップしてしまうのだ。おまけに本人は心だけ来てしまって体はなんとドラゴン。愛するアンジーをさらわれてAという筋書き。ところがこのイギリス、竜が居るは魔法使いはいるは、狼は喋るはどこかずれてる。全編ユーモアでいっぱいで、なかなか笑える佳作。表紙の萩尾望都の絵はキュートで粋である。

☆☆☆☆


11  最後のユニコーン

  ピーター・S・ビーグル

 うーむ。何と言っていいのか。まさに異色!という言葉が似合う。たった1匹残ったユニコーンが仲間を求めて旅にでるのだけれど、これだけ言っても何の説明にもならない。多くの人が言っていることではあるがやはり読んでみなくては。訳が鏡明となっているのも興味深い。この人、よほど作者に惚れ込んでいる様。解説でべた褒め。ともかく、読後にため息をついてしまう、重ための一冊。

☆☆☆☆


12  竜の冬

  ニール・ハンコック

 動物もの。動物ものはいいのだけれど、数々の名作には水準が達していない。動物をモチーフにした場合はかなりシビアな能力が要求されるのだけれど、あんまりそこら辺は期待できない。展開が分かりずらくて、ちょっと退屈。



13  タピオラの冒険

  ロバート・ネイサン  *

 ヒーロー不在の現代を嘆く、小犬のタピオラ。人一倍弱虫の癖に、仲間のカナリアAをつれて、冒険求めて大都会へ飛び出すが。表題作ほか、動物園から逃げだした熊をとらえるまでの活躍を描く「タピオラの勇敢な連隊」の中篇2篇を収録。老文豪ネイサンが小動物たちを心温まる筆致で描くファンタジイ。(だそうだ)


14  魔法半分

  エドワード・イーガー

40  魔法の湖

 子供たちが魔法のコインを手にいれて、大騒動を巻き起こす。ユーモラスで、面白い。私はそうでもないが、友人が大のファンで、しきりに褒めていた。実力派。

☆☆☆


15  ユーラリア国騒動記

  A・A・ミルン

 童話、いや寓話だろうか。大人のための、と帯にあるが、この作者にかかると、王様も、王子も形無しで、間抜け面をさらけ出してしまう。とくに、最初主人公らしく登場するユードー王子は変なものに変身するは、あほで、しまらず、最後まで馬鹿にされ続け。逆に同情してしまいそう。

☆☆☆


16  ガラスびんの中のお話

  ベアトリ・ベック

 これこそ童話。幾つかの童話が納められているが、「姫泣き鳥」を紹介しよう。悲しみにくれた姫が泣く涙は湖になる。彼女の髪は茨となって突き刺さる。そして、姫泣き鳥は夜の闇を食べて生きる…。
 深い悲しみと喜びを詠ったものが多く、痺れてしまう。

☆☆☆☆


17  黄金の鎖

  アレクサンドル・グリーン  *

 ”本物の冒険”に出会うことを夢見る少年水夫は、ふとしたことから海賊に巨大な城館に連れてこられた。この迷路とカラクリからなる城館こそ、海賊たちの隠れ家だった。しかも、この館には、秘法黄金の鎖が隠されていたのだ!黄金の鎖をめぐる海賊たちの争いを、ロシア文学の異端作家が描く海洋ファンタジイ!(だって。海洋、ていうのが珍しい。しかし、3年前にはみんなどれもこれも売られていたのに。)


18  ピポ王子

  ピエール・グリバリ

 これも童話。ピポ王子がすべてを失って、そして新しいものを得る物語。それなりに美しくて良い。結構王子がいじめられて、そこがまた楽しい。ポピ王女もでてくるのだ。ピポピポ。

☆☆☆


19  自転車で月へ行った男

  バーナード・フィッシュマン  *

 ステファンは自分が透明人間になっていく様な気がした。何も感じないのだ。怒り、悲しみ、そして愛さえも。そんな彼にも、一つだけ熱中できるものがあった。10段変速サイクリング自転車だ。これに乗ればどこへでも行ける。たとえ月へだって行けるのだ!大人版「星の王子様」とうたわれた話題作(しかし、これを読んでいるとすべて傑作のような気がするから不思議。読んでみたい、って気にさせる。最後の!マークのせいかも。)


20  妖精の王国

  ディ・キャンプ&プラット

 おっさんが、妖精界にいって活躍する話。この人達の話はおっさんにリアリティがあり、しゃれていて、テンポが良い。シニカルな視点がたまらない。

☆☆☆☆


22  二人の魔法使い

  ニール・ハンコック

23  光の女王ロリーニ

24  終わりなき道標

25  聖域の死闘

 動物がぺらぺら喋るのはいいのだけれど、人間を矮小化したみたいで、気に入らない。話に山谷がなく、どことなくだらだらしていて、読んでいてはりがない。惰性で全部読んだけれど、非常に辛かった。終わったときにほっとしただけで、内容は良く分からなかった。



26  ゲイルズバーグの春を愛す

  ジャック・フィニイ

 テーマは「古き良き昔」この人は現在が嫌いなのか。ノスタルジックで、まあ、よいのか。短編集となっている。舞台は現代であるから、説得力あり。

☆☆☆


27  精霊達の庭

  M・L・カシュニッツ  *

 「死刑だ!」動物と植物の精霊のすべてが声を揃えて叫びました。かわいそうなのは幼い兄弟。ここが魔法のにはなんて知らなかったのですから…するとそのとき、美しいブナの気の精がことを見かねてある提案を下しました…現代ドイツ文学の閨秀作家が、ドイツ・ロマン派メルヘンの伝統を継承して語る創作童話集。(ということだが、ところで。提案って下すものなのだろうか。書いた人はプロだろうし。)


28  ビバ!ドラゴン

  G・K・チェスタートン他

 これは傑作集と称して、竜に関係するものを集めてある。甘いの辛いの、熱いの冷たいの。最後の竜退治の話は、クールで良い。まあ、色々な話が入っているから、まったくの失望はない。

☆☆


29  異星から来た妖精

  S・L・エングダール

 これはどちらかと言うと、SFに入るのではなかろうか。異星から来た妖精というのはつまり、発達した異星人のことなのだ。しかも、女の子で、「仙女」として、現地人の勇敢な少年と恋に落ち、手助けをし、別れる。メランコリックで、最後の結末にしても結局そうにしかならないのが分かっていても歯がゆく思ってしまう。

☆☆☆


30  魔法使いの弟子

  ロード・ダンセイニ

 またもや読みづらい。とはいえ、雰囲気は重厚で、世界はしっかりしている。ダンセイニが好きになれないのは自分の根性がないためだろうか。相性の問題か。どうも、心にぴりりと来ない。ちなみにちくま文庫の「妖精族の娘」は好きだ。



31  カメレオンの呪文

  ピアズ・アンソニイ

44  魔王の聖域

59  ルーグナ城の秘密

78  魔法の通廊

90  人食い鬼の探索

105  夢馬の使命

125  王女とドラゴン

 たくさん出ているなあ。というのが、最初の感想。やはり、これを知らない人はもぐり。そして、やはり、傑作。確かに面白い。現代的でもある。そのせいか、あまり摩訶不思議な神秘性はない。作者がSF畑のせいだろうか。どこか、論にこだわっている。理路整然とし過ぎているのだ。訳の分からないところが少しぐらいないとファンタジィとしては不充分、といったら、言い過ぎだろうか。いやいや、面白さを否定しているのではないから念のため。

☆☆☆☆


32  光のかけら

  ジョン・ガードナー  *

 朝、めざめるとこの世は漆黒の闇に包まれていました。そうです、世界征服を企む二人組が、世界中の光を盗んでしまったのです。表題作ほか、性悪で醜い魔女が、改悛して善良な老婆になるまでをユーモラスに語った「魔女の願い事」など、伝統的な妖精譚を奇抜な発想と巧妙な語り口で一ひねりした創作童話集。(だとさ。しかし、片っ端から、絶版にしてくれる。売れないのは分かるけれど。そんなに面白いなら印刷してほしいものだ。この本も恐らく、どこかの古本屋で眠っていると思う。そこで、みなさんにお願い。もし、私の持ってない本を手にいれた、持っているなら、是非ともお譲りください。定価の2倍まで、出します。とほほ。お手紙くださいね。


33  神々の角笛

  ディ・キャンプ&プラット

37  妖精郷の騎士

49  鋼鉄城の勇士

52  英雄たちの帰還

 でました、ご両人。ノリの良さと軽さ、人気の<ハロルド・シェイ>シリーズ。そのくせ、奥が深くて、読みごたえあり。
 主人公ハロルド・シェイは異世界への呪文を手にした。調子に乗って、冒険に出かけるのはよいが…。異世界では異世界の法則が働き、ハロルドはその頭と口とフェンシングの腕前だけを便りに、快刀乱麻の働きをする。
 背景世界は、北欧神話に「妖精の女王」「狂えるオルランド」に「カレワラ」と一冊ごとに変わっている。日本人には余りなじみのないものも多いが、大丈夫。ハロルドの覇気はそんな心配を吹き飛ばすほど。

☆☆☆☆


35  北風のうしろの国

  ジョージ・マクドナルド

 リリカルな名作。子供向けだけあって結構読み易い。この人は「王女とゴブリン」など、色々なファンタジィを書いているから、そっちのほうで知っている人も多いと思う。
 主人公、ダイヤモンド少年は、北風に連れられて毎夜、旅に出かける。北風は黒い髪をした青ざめた美しい女性だった。
 作者は大衆の貧困、苦しみなどを裸の目で見つめており、全編のイメージは結構暗い。

☆☆☆


36  魔法がいっぱい

  ライマン・フランク・ボーム

 この人は何よりも「オズ」が有名。内容は奇想天外なおとぎ話で、結局、うーん、それだけ。

☆☆


38  田園幻想譚

  ハンス・ファラダ  *

 天涯孤独の書記官グントラムは、平凡なお役所勤めの毎日にいささかうんざり気味。そんなある日、とある田舎の大邸宅、実は彼に相続権があると知らされた。ところがこの問題の大邸宅に相続権をめぐり魔女や魔法使い、果てはグントラムの分身までが出現する始末…静かな田園に奇想天外な大騒動が巻き起こる!(だって。最後の!マークにはいい加減飽きてきた。)


39  イシュタルの船

  A・メリット

 イシュタルというのは万人の想像を刺激するのかこうゆう題は多い。もっとも映画「イシュタール」はどたばただった…いやいやそれはさておき、主人公の冒険家ジョン・ケントンはふとしたことから、異世界へと巻き込まれ…
 やっぱり、いつものパターンを踏んではいる。文章は重厚、雰囲気は雨雲のよう、たった9時間を四百ページかけてかくこのねちっこさ。しっかりした内容で、まあまあ。可も不可もなし。

☆☆☆


41  金色の階段の彼方

  ハネス・ボク

 これはどういう本なのか、読んだ後でも判らない。作者が画家のせいか、筋がまとまってなく、非常に読みにくい。なんとも表現できない。





本の同人誌 定期購読のお知らせ
  年2回夏、冬発行
  定価 一百円

<あなたもこの機会に貴重な一冊を
 確実に手元に>



42  月と太陽の魔道師

    タニス・リー

43  冬物語

45  闇の公子

48  白馬の王子

50  死霊の都

51  幻魔の虜囚

53  闇の城

83  影に歌えば

86  死の王

89  惑乱の公子

96  タマスターラー

121  熱夢の女王(上)

122  熱夢の女王(下)

 実のところ、これがすべてシリーズと言うわけではない。また、幾つかはシリーズだけれど、話がつながっている訳でもない。かといってこれだけ多いものをバラバラにしたら、見にくい。と、ここでまとめたわけです。五〇版以降も入っているのは、現在まで出ている彼女の作品すべてを載せたため。また、そのうち出るでしょう。
 この人の作品には二種類あって、一つは「冬物語」に代表されるジュブナイル。もう一つは、「闇の公子」などの、危ないきらびやかな幻想もの。読み易いのは前者の方で、面白さも美しさも抜群。後者の群れは確かに凄いのだけれど、私には息切れがしてしまう。
 ジュブナイルの本命は「冬物語」そして「闇の城」。あでやかな方はちょっと分からない。

☆☆☆☆


46  魔性の犬

  クエンティン・クリスプ  *

 名門エムズ家の末裔ヘンリー・エムズ卿の人間嫌いは周知の事実。その人間嫌いが講じて、なんと遺産を愛犬のフィドーに送ったことから一騒動。フィドーをめぐって、召使い、娼婦、ジゴロといずれも頭のおかしな連中が愛欲と物欲に刈られて地味泥の地獄絵図を繰り広げる!(へーえ)


47  魔法の国の旅人

  ロード・ダンセイニ  *

 世界中の国々のあらゆる出来事を見聞してきたと大風呂敷を広げるジョセフ・ジョーンズ。この男、酒場に集う客を相手に、今宵も天性のストーリィ・テリングの才に酒の酔いも鉄だって、奇想天外な物語の数々を次から次へと紡ぎ出す。(この本、本当は持っていたのに、ずいぶん前に無くなってしまった。話の内容すら覚えてはいないため、しかたなく、目録に頼った次第。)


54  水晶の涙

  ジェイン・ヨーレン

 姿を見られたため、人間にされた人魚と、耳の聞こえない女の子の話。
 3つの知恵
忍耐せよ、海のように
周囲の生命のリズムに合わせてうごけ
すべてのものは他のすべてのものにふれ
 あらゆる生命は海とふれ合っていることを知れ。
 この3つの知恵にこの人のいいたいことが詰まっているように思う。二人の少女は出会うことによって、何かを学んでいく。

☆☆☆☆☆


55  妖魔の騎士(上)

56  妖魔の騎士(下)

  フィリス・アイゼンシュタイン

 これは騎士といっても騎士は出てこない。おもに魔法の話なのだが、これが圧巻。魔法使いたちは専門が別れていて、例えば、森の魔術師、妖魔の魔術師といる。この2種類の魔術師の争いはなかなか、派手。だがしかし。出て来る肝心の妖魔のうち、下っ端クラスはどんなんだか判らない内にうじゃうじゃ出て来るし、妖魔の世界はあんまり想像力をかき立てない。とはいえ、全体の迫力はなかなかのもの。

☆☆☆☆


57  ありえざる伝説

  ウィリアム・ゴールディング他  *

 <ファンタジィ傑作集3>1983年度ノーベル文学賞授賞作家ウィリアム・ゴールディングの「特命使節」他、<破滅・侵略テーマSF>の巨匠ジョン・ウィンダムが女性だけのディストピア世界を描く「機に習いて」、<ゴーメンガースト城>三部作の作者マーヴィン・ピークの「闇の中の少年」を納める傑作中篇集(なんか、作家の肩書ばかり並んでいて、何がのってんだか判りづらい。ゴーメンガースト城なんて知らないけどなあ。私が無知なのか。)


58  霧の都

  ホープ・マーリーズ

これはちょっと前に復刊されたから、手に入りやすいのでは。話は、おっさんが妖精の国に行って、そして帰ってきて、色々するのだ。1920年に出ただけあって、やっぱり古い。登場人物の機微が書き込まれていてそこらが楽しめる。

☆☆☆


60  魔術師の帝国(上)

  レイモンド・E・フィースト

61  魔術師の帝国(下)

98  シルバーソーン(上)

99  シルバーソーン(下)

107  セサノンの暗黒(上)

108  セサノンの暗黒(下)

 これは、リフトウォー・サーガと名づけられている。一応、それぞれ一話完結。最初はひ弱だったバグが、最後の方にはごっつい強くなっているから、成長物と見ることもできる。内容は完全な異世界物で、その世界がまた、一風変わっている。さらにもう一つの世界も出てきて、読者を飽きさせない。しかし、これもオリジナリティでは今一つ。惰性で読み続けさせる。キャラクターも生きていない。

☆☆☆


62  氷の覇者

  パトリシア・ライトソン

63  水の誘い

64  風の勇士

 オーストラリアの話。素材をオーストラリアの言伝えからとっているのは新鮮。つまり、今までの西洋風妖精、魔法使い烽B3冊とも主人公はウィランという名のアボリジニの青年で、<ウィラン・サーガ>ということになっている。とにかく、型にはまらず、自由なファンタジィ。
ウィランが途中で女性に捕まってしまう(=恋に落ちる)のは、ちょっと身につまされる。

☆☆☆☆☆


65  夕映えの戦士

  エリック・V・ラストベーダー  *

66  真夜中の戦士

67  暁の戦士

82  月下の戦士

 このシリーズ全部揃えてはいないので、次に解説を載せる。
 雪と氷に凍てついた大地を捨て、人類は地中深く異世界を築いていた。この地底世界に天下無双の剣技で知られるローニンという孤高の剣士がいた。彼は、とあることから意外な噂を耳にする。荒涼たるはずの地上に新たな文明が築かれているらしいのだ。!東洋風異色ヒロイック・ファンタジィ!(主人公の名前がローニンだものなあ。どこが東洋風なのか。結構日本名が出てきて笑えるかも。


68  白い鹿

  ナンシー・スプリンガー

70  銀の陽

71  闇の月

75  黒い獣

76  金の鳥

 <アイルの書>は全5巻。それぞれ、1話完結となっている。架空の島、アイル(そのまま)を舞台として、古代から綿々と綴られる。世界は幻想的、人物は神秘的。
西洋のエルフたちが出て来る物語が好きなら、これはお奨め。綺麗な本。

☆☆☆


73  夢織り女

  ジェィン・ヨーレン

74  3つの魔法

 今度の二つはヨーレンの前作とは変わって、FT文庫久々の童話物。しかし、これは凄い。心臓がぴりぴりする位綺麗で澄んだ世界はなんともいえない。ああ、別の作品も入れては貰えないものか。

☆☆☆☆


77  魔界の盗賊

  マイクル・シェイ

 ゴロテスクで、ユニークで、エロティックな怪奇物。とはいっても、やっぱり、もう少しオリジナリティが欲しい。贅沢だろうか。

☆☆☆


79  妖霊ハーリド

  F・マリオン・クロフォード  *

 千夜一夜風古典(とのこと)


80  青い剣

  ロビン・マッキンリィ

100  英雄と王冠

 舞台は架空の国だけれど、現在。リアルでゴージャスでしっかりしている。小技が聞いていて、読者を白けさせない。筆力も充分にある。珠玉の一冊。

☆☆☆☆☆


Hayakawa FT Part 2.


怒涛の大特集

−ハヤカワFTを追え− Part 2

森沢 秋

FT81から、現在まで


 思えば、我らがあの大事業「ハヤカワFTを追え」を敢行したとき、わたしはある一つの重大な事を失念していた。1があれば、2がある。そう、この企画、非常な面倒臭さと手間暇を要するのである。だがしかし、パート1で終わりにするわけにも行かず、当然のように、ここに「ハヤカワFTを追え」パート2をまたもや敢行するのだ。この1年間のわたしの努力は我らが本の同人誌史上に燦然と輝く星となって、永遠に語り継がれるであろう。
 前回と同じように、作品は番号順に並んでおり、後にわたしの勝手な評価とお勧め度が付いている。シリーズの多くは前回紹介しており、今回は取り上げない。


84  妖精王の冠

  ヒルデブラント兄弟&J・ニコルズ

 伝統的なファンタジィで、悪を善が倒して終わり。今いち、迫力とストーリー性に欠ける。ありていに言えば、おもしろくないのだな、これが。



85  プリンセス・ブライド

  ウィリアム・ゴールドマン

 映画化されているから、そちらの方で知っている人も多いはず。これは架空の人の小説をゴールドマンがリライトした、と言う形式を取っていて、小説中の小説として、話が始まる。内容はと言えば、架空の国での、おとぎ話に近く、豪華絢爛たる魔法も、大仕掛もない。それでも、読んだ後に残る心地は構成の上手さと、文章の巧みさによるものだろう。きんぽうげ、というヒロインの名前が日本語の響きに妙に似合っていて、心に残る。

☆☆☆☆


91  王様猫と野良猫の冒険

  A・ブラックウッド

 残念ながら、入手できず。


92  ダミアーノ

  R・A・マカヴォイ

95  サーラ

97  ラファエル

 この3つは「魔法の歌」として、3部作となっている。
 これほど、掟やぶりの話は今まで見た事がない。だって、まさかねえ。途中で・・。
 とりあえずは、紹介から。舞台はイタリア。時代はルネッサンス。いまだ魔法使いがうろちょろしていた頃。主人公の魔道士にして、華麗なるリュートの弾き手、ダミアーノは街を救うため、旅にでるが・・。彼の師匠の天使ラファエル、ラフtァエルの兄、悪魔サタン、女魔術師サーラ、といった個性どころを持ってきて、話はきらびやかに進んでいく。一人一人がしっかりと描かれていて、支障無く読み進む事が出来る。一応、実際の地球に素材を取っているので、そこらも、楽しめるかも。個人的にはダミアーノの情けなさが好き。マチアータも可愛いし。

☆☆☆☆


93  ウインターズ・テイル(上)

  M・ヘルプリン

94  ウインターズ・テイル(下)

 知り合いは、大学時代、英語の授業中に、これをやったと言っていた。それくらい、文学の格調高く、香り高い逸品である。ただ、一つ一つのシーンは美しく、洒落ているのに、全体としてみたら、よく判らない、というどつぼにはまると、大変。誰に聞いても、「難解」という返事しかない。気にいった所だけを何度も読み返しても、相当楽しめはするのだけれど。まあ、噂の馬で駆けるシーンだけでも読むべきか。教養として読むなら、人に自慢できるし。

☆☆


101  ムーンフラッシュ

  パトリシア・A・マキリップ

115  ムーンドリーム

 「ムーンフラッシュ」には、未開の世界にいる少女が、異世界の科学文明からの使者に触れ、成長し、変化していく様子が描かれており、「ムーンドリーム」は、それからの彼女の冒険を描いている。
 マキリップといえば、「イルスの竪琴」を思い出してしまうが、こちらはまったく違っている。原始世界のシャーマニズム的な世界と文明での合理主義が入り乱れていて、興味深い。 未知のものにあう少女の好奇心、不安などの感情の襞が書き込まれていて、楽しめる作品。

☆☆☆☆


102  ダークエンジェル

  メレディス・アン・ピアス

 遥か、未来。月に住む人々のお話。とはいっても、SF臭さはまったくなく、純粋なファンタジィとなっている。全体のイメージ統制がきっちりしていて、完全な世界を作り上げている。淡い色で彩られた砂漠の国が、パステルタッチで描かれていて、気持ち良い。黒い翼と魔性の美しさを持つバンパイアに対し少女が立ち向かう、というのが筋だが、微妙な言葉使い、節回し、イメージが、この作品を傑作にしている。筋も決して単一ではなく、意外な結末があなたを待っている。続編があるのに、まだ、日本で出てないのだけが気がかり。うーん、やっぱり出ないのだろうか。是非とも皆さん買って買って買いまくって、ハヤカワに次巻を出させよう。

☆☆☆☆☆


103  霜の中の顔

  J・ベレアーズ

 失礼。入手出来ず。なにやら、噂では結構な佳作とか。ハヤカワは、人気のあるのは、しこたま出すけれど、売れなかったらすぐさま見捨てるからなあ。


104  無限コンチェルト

  グレッグ・ベア

118  蛇の魔術師

 一六歳の少年マイケルが、異世界「王国」へと旅立ち、そこで様々な冒険を繰り広げる。物語の基調には、芸術がある。幻の曲「無限協奏曲」の調べに乗って物語は始まり、少年の作る詩は物語を進める柱となる。映像は峻烈で、容赦なく、非常な迫力を持って読者に襲いかかる。とはいえ、読みこなすにはかなりの努力と根性を必要としそう。分かりやすいとは、言い難いし。思春期の持つ未成熟の嫌らしさなども、描かれている。マイケルの行く幻想の世界よりも、彼自身の心の動きに心弾かれてしまう。下巻(蛇の魔術師)のラストは素晴らしく、苦労したかいがあったなあとつくづく感じる。

☆☆☆☆


106  予言の守護者

  デイビィッド・エディングス

109  蛇神の女王

112  竜神の高僧

116  魔術師の要塞

120  勝負の終わり

136  西方の守護者

139  熊神教徒の逆襲

142  マーゴスの王

143  禁じられた呪文

147  疫病帝国

148  カランダの魔神

150  メルセネの錬金術師

151  ダーシヴァの魔女

156  ケルの女予言者

 FTきっての特大シリーズ登場。前半5巻。後半10巻。なんとまだ完結していないという、とんでもない代物。ストーリーははっきりしていて、
 「ガリオンが強くなって敵を倒す」
 これしかない。それは、最初の第1巻を読んで判る事であり、読者が秘密を探り当てて行くような楽しみは、全くない。
 それでも、この作品、大変な人気だが(人気が無ければ続きがでない)、その理由は何処にあるのだろう。一言で言えば、これはまさに、「水戸黄門」なのである。まず、主人公は決して負けない。最後は必ず、ハッピーエンド。敵はずるくて悪い奴。毎回、なにかイベントがあれば、なお結構。このように、安心して読めるところはさすが。あとは、巧みな人物描写で、ウィットの効いた会話もある。ただ、それでといわれると、それ以上のものはありはしない。

☆☆☆


110  異教の女王

  マリオン・ジマー・ブラッドリー

114  宗主の妃

117  牡鹿王

119  円卓の騎士

 アヴァロンの霧シリーズ。ブラッドリー書くところの「円卓の騎士」v。アーサーの姉にして恋人、妖女モルゲンに焦点を当て、登場人物の心理描写に重きをおいている。一巻は、モルゲンの母親が主人公。しっかりした筆力で、伝説の世界を描いている。とはいえ、ネタ切れの感もある、今日この頃。焼き直しばっかりじゃ、読む気にならない。

☆☆☆


111  ウィロー

  ウェイランド・ドルー

 あの、最低といわれた映画のノベライズ!小説の映画化なら分かるけれど、ノベライズとはねえ。ノベライズにろくなのがないのは、毎度のことなのに。
 ただ、この「ウィロー」、映画はボロクソに言われていて、もうそれだけで見る気を無くしたのだったが、このノベライズ版を読んで、やっぱり見なくて良かったと思ったものだ。まあ、一般のファンタジィものの路線を踏んではいるのだが、、異世界で悪の女王を善のパワーを結集して倒すという、まあ子供の頃の戦隊ヒーローものを彷彿とさせるあらすじである。イメージは湧かないし、メッセージは無いし、おまけにキャラクターも個性がない。無い無い尽くしのうえに、オリジナリティもない。退屈する訳でもないが、一冊読んでも何も後に残らない。電話帳を読んだ方が、まだまし。



113  黒竜とお茶を

  R・A・マカヴォイ

 このFTシリーズの中でも、もっともファンタジィしていないのが、この作品。何しろ、魔法は出ないは、幻想の生物は出ないは、舞台は現代の地球だは、ちょっと聞くと「何処がファンタジィなんだぁ」と、首を傾げたくなるかも。まあ、そこはなんといっても、「魔法の歌」の作者。昔、中国で龍だったという中年の男をまじえて、これまた中年女性マーサが活躍するお話。昔龍だったといっても、今の彼には大した魔力はない(力は強いけど)。そんな彼の禅の思想や、マーサのバイタリティを味付けにして、異色のファンタジィが繰り広げられるという次第。派手な幻想ものを期待する方には向いていないが、マーサを含めたキャラクターが生き生きしているし、欧米人の考える禅と言うのも興味深い。

☆☆☆


123  ホムンクルス

  ジェイムズ・P・ブレイロック

 スチームパンク第1弾とのこと。ヴィクトリアン朝のロンドンを舞台にしている一連のマッド・ヴィクトリアン・ファンタジィは、「蒸気」にかけて、スチーム・パンクと名付けれている。内容は、とにかく妙な人間達が、妖しい機械だの術だの使っていろいろな騒ぎを繰り広げるだけ。山場も落ちもない、ま驍Aや・お・い。こういうのが好きな人はいいけれど、普通は飽きてしまう。意味もなくだらだらと続き、終わる。いい加減にして欲しい。



124  魔法の王国売ります!

  テリー・ブルックス

133  黒いユニコーン

138  魔術師の大失敗

 冴えない中年のおっさんが、魔法の国へ行って王様になる話。ランドオーヴァーというのが、その王国名であり、またシリーズ名ともなっている。割と1巻は面白く読んだのだが、2巻3巻と続かなかった。「黒龍とお茶を」のマーサと比べると、いかに中年男性が覇気がないか分かる。人生の悲哀がびんびん伝わってきて、「人生とは辛いものだ」という気が骨髄まで染み通る。例によって、しゃれた会話が楽しめるので、そういうのが好きな方なら、読めるかも。

☆☆


128  悪魔の機械

  K・W・ジーター

 19世紀、ヴィクトリア女王の治下英国を舞台とした、スチームパンク。出てくる人物が、奇人・変人ばかりで、全編妖しい雰囲気が漂う。上の「ホムンクルス」に比べれば、物語としての体裁は整っている。
 唯一、常識的な主人公は、底抜けの間抜けで、「紳士的態度」と「真面目」を武器に活躍するのだが、もちろん、Aそんなものが気違いどもに通じるはずもなく、あちらこちらをうろうろしては、騒動に巻き込まれる。この作品、訳が上手くて、その点主人公の間抜けぶりがこちらに良く伝わってくる。
 ただし、幾つかの幕間での種明かしが、読者に親切すぎて、興をそがれる。それとなくばらしていくほうが、情感は高まるのだが。

☆☆☆


129  夏の樹(上)

  ガイ・ゲイブリエル・ケイ

130  夏の樹(下)

 この話、フォナヴォワール・タペストリー・となっているが、これ以降、続刊は出ていない。このことは、何を意味するのか。
 すなわち、このシリーズは売れなかったのだ。では、それはなぜか。
 面白くなかったからである。



131  リバイアサン

  ジェイムズ・P・ブレイロック

 本屋でよく売っているので、今でも入手化。それなのに、今いち気が乗らず(ホムンクルスのせい)、気が付いたら買うのを忘れていた。したがって評価無し。


132  天界の馬

  メアリー・スタントン

 馬が主人公のファンタジィ。こういうと、とんでもなく聞こえるが、本当にそう。神様が馬だし、登場するのも馬。本当に馬一色なのに、妙に人間くさいのは何故でしょう。そもそも、馬ってこんな風に考えるのか、とか考え始めたらきりがないけれど、それにしても、ねえ。それなりに盛り上がらない訳ではないのだけれど。もし、馬に感情移入出来る人なら、今言った事が気になるし、感情移入できないなら、初めから読まないほうがいい。なんとも、微妙な1冊ではある。でも、まあ死んだものをおくるシーンは、悪くないが。

☆☆


134  テイルチェイサーの歌

  タッド・ウィリアムズ

 猫が主人公。猫から見た世界を若い猫の冒険を通して描いている。結論から言うと、猫が好きな人なら読めば良い。猫がたくさん出るから。猫が出てくるだけで幸せになれるひとには、うってつけ。そうじゃなければ、止めた方が良い。作りも甘いし、中身もすかすか。完全に「猫の目」という気がしない。

☆☆


135  異時間の色彩

  マイクル・シェイ

 ファンタジィというよりは、ホラー。実はクトゥルーものの亜流で、なんとエルダーサインまで出てくる。ラブクラフトの「異次元の色彩」を踏まえて、焼き直したと言う感じ。描写も展開もよく、テンポよくクライマックスへ向かう。気持ち悪さもそれなりに楽しめる。

☆☆☆


137  ルーフワールド

  クリストファー・ファウラー

 現代の、それも屋根の上が舞台の一風変わった作品。イギリスはロンドンで、屋根の上を使ったネットワークが存在し、さらには魔術を扱う結社まで登場して、冴えない中年の主人公が巻き込まれていくという次第。まあ、こういう時に出てくる中年男は冴えないと決まっているのだけれど。なにしろ、実際の屋根の上が作品世界だから、リアリティは抜群。いやいや、リアリティ等ではなく今でもロンドンなら、そういう見えない蜘蛛の巣が張り巡らされているのかも。小説自体はあまりぱっとせず、すっきりしていない。

☆☆


141  闇との戦い

  バーバラ・ハンブリー

144  迷宮都市

146  光の軍隊

 これも、現代の若者が異世界に連れて行かれていろいろ冒険するお話。見所、いや読み所は重厚な、とっても重厚なその時代の描写と、ヒロインの筋ばった性格。都市やその他の描写はなかなか、読みごたえあり。敵がぬめぬめ、ぬらぬらしていて、そういうのが好きな人にも、お勧め。しかし、三巻それだけで息が続くかと言うと…。

☆☆


145  一角獣をさがせ!

  マイク・レズニック

 FT初の快挙、ファンタジィと探偵ものの融合。結構マジで主人公がハードボイルドしている。全編これユーモアと洒落で成り立っていて、軽妙な事このうえない。作中の舞台となる「もう一つのマンハッタン」という言葉に作者の思いが込められている。物語を作る上での基本の姿勢が前向きでマル。

☆☆☆☆


149  太陽神の乙女

 マリオン・ジマー・ブラッドリー

152  アフロディーテの贈り物

153  ポセイドーンの審判

 「ファイアーブラント」シリーズ
 この人の作品ははずれがない。数が多いけれど、どれも一定のレベルを保っている。これなんかも、その例。題を見れば判るけれど、ギリシアの「トロイア戦争」に題材をとって、それを例によって例のごとく脇役人物にスポットをあて、違った解釈を与えている。

☆☆☆


155  光と闇の姉妹

  ジェイン・ヨーレン

157  白い女神

 本誌「めったくた新刊ガイド」参照の事。

☆☆☆☆☆




<<<<<<<<<総評>>>>>>>>>
 今回、わたしの精神状態もあって、点が非常に辛くなってしまった。前回とは多少基準がずれているので、注意。多分に個人的趣味に走っているので、合わない人には全く参考にならないであろう。まあ、誰が読んでもつまらないものはつまらないけどね。
 前回のパート1と合わせて、次回単行本として出版予定。大幅に書き足すので、ご期待どーぞ


Last Updated 2002.10.8